O様の場合

O様は、私がデイサービスに勤務していた頃のご利用者様で、性格や生活のご様子をある程度理解しておりました。
奥様と仲睦まじくお暮らしでしたが、突然奥様がご逝去され、その後、認知症の進行が見られるようになりました。
娘様から「父の施設探しをお願いしたい」とご相談があり、お手伝いさせて頂くことになりました。
娘様は北陸にお住まいでしたが、「父の施設が見つかるまでは大阪に滞在します」と決めておられ、そのお気持ちに強い決意を感じました。
ご自宅を訪問した際、O様はまだ奥様のご逝去を理解しきれていないご様子で、奥様を探してはお仏壇に話しかけておられました。
そのお姿を拝見し、生前のご夫婦の仲睦まじい姿を思い出し、胸が張り裂ける思いでした。
娘様からは「将来的に大阪に戻る予定があるので、地域に根差した環境で安心して過ごせる施設を」とのご意向を頂き、北摂エリアに絞って施設のご提案と見学を進めました。
最終的にお選びになられたのは、ご自宅の雰囲気に近く、庭園には大好きなお花が咲き、池には鯉やメダカが泳ぎ、さらに保育園を併設したあたたかみのある施設でした。
ご入居の際には、O様も穏やかな表情を浮かべられ、私も心から安心致しました。
しかし、入居後しばらくは認知症の影響から帰宅願望が見られることもあり、娘様もそのことに心を痛めておられました。
そこで、娘様と施設職員の方々が連携し、O様が日々の中で「役割」を持てるよう工夫されました。
庭園のお手入れや、併設する保育園の行事でのピアノ演奏など、O様の生活歴や得意分野を活かした取り組みを通じて、少しずつ笑顔が増え、新しい生活を前向きに過ごされるようになりました。
その後、施設から届いたご様子の報告には、以前と変わらず輝くO様のお姿があり、私も胸がいっぱいになりました。
私たち入居相談員にとって、ご本人様の笑顔は何よりの宝物です。
これからも、その笑顔が見られるよう、ご本人様のこれまでの暮らしや価値観を大切にし、「過去」と「未来」をつなぐご提案を続けて参ります。





